同 根

10月4日(2)

アンジェロ 春山 勝美 神父
Fr.Angelo Haruyama Katsumi, OFM
haruyama@netvision.net.il

 何回目かの、イスラエルとパレステイナとの停戦合意が結ばれたとのニュースが世界に流れました。しかし、今回の占領地奪回闘争(Intifada)一周年を迎えた9月28日、パレステイナ側で死者10人、双方で数十人に上る負傷者を出す武力衝突があり、これまでの、最も激しい武力衝突の一つと数えられるほどでした。

イスラエル、パレステイナは互いに相手を非難しています。シャロンはアラファトが48時間以内に暴力行為を止めさせないなら、停戦合意を無効にし、テロリストに対する攻撃を再開すると警告しました。その直後の、10月1日、午前9時頃、エルサレムの西、ベトレヘムよりの商業地で駐車中の車に仕掛けられた爆弾が爆発しました。被害は怪我人二人で、ほかに何台かの駐車中の車が巻き添えになりました。被害は少なかったと言え、テロ行為としてイスラエルには容認できないものです。

アメリカでのテロの首謀者として、追求されているオサマ・ビン・ラデインの生い立ちとテロリストとなった経緯を知るに及んで、気付いたことがあります。彼のアフガニスタンとの関わりは旧ソ連のアフガニスタン進攻であり、また、対米抗争は湾岸戦争の折り、イスラム教徒の聖地、メッカとメジナの祖国サウジアラビアに異教徒アメリカ軍が駐留し、イスラムの同胞イラクを攻撃していることとパレステイナ問題でアメリカがイスラエル側に着き、同胞パレステイナ人を苦しめていることをあげていました。私が問題を感じたのは「イスラムの聖地、サウジアラビアに異教徒がいる、これは許せない。」と言うことでした。

全世界がアメリカでの凄惨なテロ行為を非難し、犠牲者に哀悼を捧げているのを知ってか知らずか、パレステイナ住民はアメリカが攻撃されたことに歓喜しました。しかし、直後、当局はメデイアに対してはその部分のカットを命じました。BBCはその部分を放送しなかったので、イスラエル政府は抗議しました。また、キャンデイを配った店主はイスラエルの工作員に買収されたとの報道もありました。

世界がテロを憎み、アメリカに同情し、報復攻撃には支援すると表明するようになり、パレステイナ暫定自治政府もテロ包囲網に加わりました。アラファトがテロ犠牲者のため献血している写真がイスラエルの新聞に載りました。

しかし、パレステイナのテロリストグループ(Hamas、IslamicJihard)はイスラエルに対するテロ行為(神風テロを含め)を止めないと宣言しています。彼らは、占領地(1967年の6日戦争でヨルダンが失ったヨルダン川西岸)を開放するまで闘争を続けると言うのです。

私はこの主張は彼らにとって、口実であり、ワン・ステップに過ぎないと見ています。 目指すは、この地方から異教徒を追出すことです。キリスト教徒は、あってなきがごときもので、問題にしていません。彼らにとっての異教徒とは宗教的にはユダヤ教徒であり、政治形態としては国家としてのイスラエルです。

四国ほどの、わずかな土地の一部分に、ユダヤ人は2000年の夢の実現を果たしました。
イスラエル国家の建設です。アラブ人社会はこれを認めませんでした。第一次中東戦争です。イスラエルは第三次中東戦争(6日戦争)で近隣のアラブ諸国を破り、領土を拡大しました。第四次中東戦争(ヨンムキプール戦争)は緒戦は苦戦でしたが、体勢を立て直し、攻撃に転じた段階で停戦し、エジプトとヨルダンにイスラエル国家を認めさせました。まだ、他の大多数のアラブ諸国家はイスラエルを国家として認めていません。パレステイナ・テロリストはこの流れの中にいます。

今回の占領地奪回闘争(Intifada)が目指すパレステイナ国家建設は無理です。それは空気をイスラエルのものとパレステイナのものとに分けろと言うようなものです。このわずかな領域に双方の領土的、地理的に、歴史的に、宗教的に「排他的専有権を主張するもの」が多すぎます。(参照:占拠)

問題の神殿の丘を例に取れば、時間的には、最初は、イスラエルの神殿で、期間は千年でした。ローマ人、キリスト教徒はたいした関心を持ちませんでした。イスラム教徒がモスクを建てたのが西暦7世紀の終わりで、現代までの千三百年間です。現所有者と所有期間ではイスラム教徒に部があります。しかし、この地を聖地としたのはユダヤ教徒です。彼らは政治的にはローマに、宗教的にはキリスト教徒、イスラム教徒にエルサレム帰還、神殿の再建を妨げられました。

争いはこの「排他的占有権」の主張にあります。他を排するのでなく、他と共に生きること無しに、人には幸せがないと気付かなければなりません。
テロリストが攻撃目標としたアメリカですが、しかし、アメリカほど宗教においても、人種においても、言語においても、互いに共存している国は世界に例がないと思います。だから、今でも、多くの人々が移住を望んでいるのではないでしょうか。

おしらせ
エルサレム通信にいつもアクセスして下さいましてありがとうございます。
休暇帰国をもらいました。10月15日、イスラエルを発ち帰国します。
12月15日、日本を発ち、エルサレムに戻ります。その間、二ヶ月、エルサレム通信を休ませて下さい。

それに、メールアドレス:haruyama@netvision.net.il を開くことはまずありません。
そこで、別のアドレス:angeloharuyama@hotmail.com をご利用ください。
このアドレスは日本でも開くことが出来ます。