1月16日(水)午前、私たちの聖墳墓修道院の同僚、アラブ人フランシスコ司祭のお兄さん(Shadeh・Dades)がテロリストの犠牲となりました。場所はヨルダン川西岸の北部、ジェニンの近くでした。その日、何時ものように、パレステイナ地区の病院に医薬品を配達するため「Palestinian Red Crescent first aid society」(パレステイナ赤十字)の標識があるフォルクスワーゲンを運転していました。ナンバープレイトは黄色でイスラエル側のものでした。発見されたときは銃弾を7発受け、すでに死亡していました。この種のテロを、「drive-by shooting」(走行中の車を待ち伏せして狙撃する)と言い、俗な言い方では「闇討ち」であり、「辻斬り」です。
前日(15日)、ベトレヘムのベッサフルでアメリカ国籍のユダヤ人アヴィ・ボアズ(Avi・Bpaz)がホテルから誘拐され、殺害されました。その日、彼は不動産の物件を見にベトレヘムに来ました。彼は、仕事とは別に、働きたくてもパレステイナ側に仕事がないパレステイナ人にイスラエル側で仕事を見つけては、紹介していました。そのため、土地のパレステイナ人は頼りにしていました。また、来ては必ずアラブ人のホテルを利用し、アラブ料理を食べ、彼らと交わるのが楽しみでした。その彼は、すでに70の齢を越え、しかも、補助器具なしには歩行できない障害者だったといいます。ベトレヘム在住のパレステイナ人は「なぜ、このような人が殺害されなければならないのか」と悔しがっていました。
昨年、似たようなケースがありました。読売新聞が伝えた「“草の根の友情”粉砕に唇をかむパレステイナ人」(9月2日)です。8月30日、パレステイナ人と家族同様の付き合いをしていたイスラエル人のアモス・タジュリ(60歳)がテロの犠牲となりました。パレステイナ人ムルシュ・アミーラがアモス・タジュリから資金援助を受け、食堂を開いた一週間後、アモス・タジュリはその食堂で遅い朝食をとっていました。その時、テロリストに至近距離から頭を撃たれ、殺害されたものです。この事件がテロといわれるのは、数日前(27日)、パレステイナ開放人民戦線(PFLP)のムスタファ議長がイスラエル軍に殺害させた報復と見られるからです。アモス・タジュリは、数年前から、野菜や果物を求めて村に来、村民との友情を育んで来ました。一昨年から、イスラエルとパレステイナの関係が悪化し、村が道路封鎖で孤立するようになってからは村人に代わって必要な物資を村に届けるなどして、人々から信頼されていたイスラエル人だったのです。
これらのテロ事件を追ってみて、テロリストは自分のしていることに気づいていないと考えるようになりました。ユダヤ人であれば、イスラエル人であれば、彼がどれほどパレステイナの同胞のために尽くす人であっても、テロの標的にしてしまう。これはロボットがインプットされたままに仕事をしているのと同じです。とすると、テロを実行する活動家よりは、このようなテロリストを育て、彼らに指示を出す「黒幕」はもっと断罪すべきです。多分、この「黒幕」は人々尊敬される「仏の顔」を持つ人物かもしれません。このような「悪玉」は、テレビの世界では、「闇の仕事人」、またの名を「仕置人」が成敗してくれるのですが。
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