冬のソナタ

2月24日

アンジェロ 春山 勝美 神父
Fr.Angelo Haruyama Katsumi, OFM
haruyama@netvision.net.il

「冬のソナタ」が、昨年、韓流を呼び、「ヨン様」ブームを巻き起こしたことは知っていました。そして最近、この社会現象に興味を持ち、インターネットで調べてみました。

そして、驚きました。「冬のソナタ」の始まりが春川(チュンチョン)でした。なんと、韓国語勉強のためソウル滞在中、一人で友人を訪ねたところです。その友人とは、東アジア司牧研修所(マニラ、アテネオ大学内)の同期で、春川教区司祭です。

春川を案内してもらいました。信者が総出で北漢江から小石を運び、作り上げた聖堂を訪ねたときの印象は今でも色あせていません。春川明洞での食事には思い出があります。友人は賓客をもてなそうとしたのでしょう、最高のレストランで焼肉をご馳走してくれました。翌日、私にリクエストしてくれたので、「犬の肉」と言いました。この日は、日本へ行き来している先輩の神父様が同席するとのことでした。私が「犬の肉」を所望していると知ったかの神父様は、賓客に勧められるものではないと、前日入った同じレストランで同じ焼肉メニューのもてなしとなりました。「犬の肉」を味わう機会を失いました。

ソウルで、私がお世話になった修道院は「ソウルプラザホテル」の裏手です。この辺りはことばが通じなくても、地図を片手に回れる行動範囲内でした。ブームを先取りし、憧れの場所を、知らずに、回っていたのです。

ところで、冬のソナタの「ソナタ」は韓国語からの直訳ではありませんね。「yeon-ga」は旅行用の小事典には載っていません。韓国人に尋ねても、「ソナタ」とは訳してくれません。仕方なく、仕舞い込んだ韓日辞典を探し出し、開いてみると「恋歌、こいうた」とありました。冬の「恋歌」あるいは「こいうた」ではドラマのイメージと合いません。ネーミングのうまさに感心しています。

JSTV(ヨーロッパ圏内の日本語衛星放送)では先月27日から「冬のソナタ」の放送が始まりました。まだ始まったばかりですが、このドラマに「はまった」人たちが理解できます。出生を確かめたい高校生、初恋、死による突然の離別、思わぬ再会、変わらぬ、清らかな友情、嫉妬、そして、裏切り、青春の人間模様。美しい冬の映像、ヒロイン、ヒーローたちのファッション、その演技、これらを引き立てる音楽。そして、さらに、ユジンの声の代役、田中美里はNHK連続テレビ小説「あぐり」のヒロインでした。「あぐり」の役柄がそのまま、ユジンに通じるものがあって、興味しんしんです。

第4話に興味深い場面がありました。ミニヨンがチェリンにどんな家を建てたいかと尋ね、ミニヨンさんは?と逆襲された時、「好きな人の心に建てたい。」と言います。また、スキー場を下見しながら、ミニヨンが婚約したばかりのユジンに「どんな家に住みたいのか。」と尋ねると、「考えたこともない。」と答え、さらに、建物よりもっと大事なことは、「好きな人の心に住むことです。」と言い切ります。わざとない「ことば」や「しぐさ」が人を現します。それに共鳴する時、愛が生まれます。このような体験をもつ人は決して少なくないはずです。

始めと終わりの場面は、チュンサンとユジンのFirst Kissの場として、ことさら有名になったロケ地で、日本からの多くのツアー客を呼び寄せているとか。日本でも、NHK大河ドラマのロケ地やセットが観光客を呼んでいます。しかし、ヨン様ブームはドラマのロケ地を神聖な「巡礼地」にしているとも聞きます。

昨年だったか、HNKのドキュメント放送がありました。冬のソナタに感動した人たちがグループを作り、DVDを共に見、思いを分かち合い、例の「聖地巡礼」をしている様子でした。

冬のソナタがうずもれた青春を呼び覚まします。これまでは秘め、思い出として閉じ込めていたものを解放させます。ですから、かのサークルでは、追体験しながら、自分の思い出をさらけ出し、分かち合い、過去となった青春を見直します。

ここはキリストの処刑、死、埋葬、そして、復活のもっとも神聖な巡礼地です。多くの巡礼者、旅行者と出会います。最近、二つのタイプに気付きました。一つは、出来事の歴史性を重要視し、例えば、キリストが埋葬されたお墓は「確かに、ここですか。」と尋ねる人。出来事の現場(お墓)を見に来る人です。他は、キリストの救いに生き、救いが、「ここで起き」、「ここから始まった」ことを確認しに来る人。信仰を「出来事が起きた場所」に結びつけ、信仰を固める人です。

冬のソナタロケ地を巡礼する人たちが、そこで「自分と向かい合い」、そこから「人と活きる活力を新たに汲み取る」としているなら、すばらしい旅です。