フランシスカン海外宣教の日

パキスタンで働いている兄弟フランシスコ松本貢四郎の声

 パキスタンの一日は、まだ目の覚めぬ早朝に突如として聞こえてくるイスラム教の「祈りへの招き」(アサーン)の厳粛に満ちた声から始まる。

現在の仕事は、パキスタンの知的障害児者と身体障害児者の社会復帰へのための、教育と職業訓練のサービスを行っている。

当施設で学んでいる子供たちは26名に膨れあがり、ほぼ定員数を確保している。この中には、創立当初からの子供ガザンファル君とファルーク君の男の子が2名含まれており、私たちと一緒に10年の道を歩んできた。

ガザンファル君は私と同じ誕生日である。彼が入設した時は5歳で、藁のひと束を抱えるように感じたほど軽い子だったが、今では口ひげなぞも立派に生え、体重も重くなり、抱きかかえられないほどになっている。10年一昔になると、悲しい思い出もある。

3年ほど前まで、やはり創立当初からずっと一緒だった女の子ナディアちゃんのことである。彼女は当時12歳。長いことずっとてんかんの発作に苦しみ、薬を常用していたが、3年前にナディアの母親が実家の手伝いに行っている間にナディアに発作が起こり、呼吸困難に陥り亡くなってしまった。後で話を聞いたところによると、ナディアの母親は実家に行ったり来たりで忙しくなり、娘のナディアに常用の薬を飲ませる事を忘れてしまったという。この事件は本当に悲しい出来事となってしまった。

パキスタンでは、障害者への国からの援助はない。国は貧しく、障害者援助に回す資金の余裕もゆとりもないのである。

こんなときに何時も最初に切り捨てられるのは障害者や弱い立場に生きる人々である。

『あなたがたによく言っておく。わたしの兄弟であるこれらの最も小さい者のひとりにしたのは、すなわち、わたしにしたのである』 (マタ25,40)