このところソウルは激しい雨に見舞われています。あちこちで水害がでていると報じられています。治水が整っていない北のほうはもっと悲惨な状態ではないかと心配しています。
私の住んでいる修道院は少し山手にあって、部屋からはちょっとした中庭が見え、そこにおん子を抱かれた聖母像があり、周りの林からは雨なのにせみがしきりに鳴いています。せみの声は賛美の声でしょうか。初めはそう思って聞いていましたが、悲しみや嘆きの声かもしれないとも思いました。
このところ、歴史教科書の問題で日韓関係が冷え込んできて心配しています。ただ、ひところの日本総非難から少し韓国のマスコミの中にも、冷静に日韓関係を見つめ、日本の中にもいろいろな考えがあることを伝えるようになりました。「学生交流まで中止させる必要があるのか」(7/16)、「生きている日本の良識」(7/19)、「韓日、民間交流は続けるべき」(7/21)、以上中央日報社説より。「日弁連『首相の神社参拝は違憲』」(7/27)朝鮮日報より。http://japanese.joins.com/
ソウル市庁の正面には、大きな電光掲示板があり、ワールドカップ開催の日までのカウントダウンが毎日刻まれています。96年に決定されたこの日韓共同開催は双方が決して望んだものではなかったものですが、結果的に日韓関係を大きく好転させることになりました。特に、金大中大統領の訪日の際に、小渕首相との間に交わされた日韓共同宣言は「21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップを構築する」未来志向の新時代を告げるものでした。以後、スポーツの交流のみならず、政治経済文化のあらゆる面での交流が促進されていきました。
ところが、「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書が明るみにでるや、日韓関係に大きなひびが入りました。韓国側は、歪曲された記述が正しく修正されるようにいち早く抗議してきました。これに対してして日本側の対応は決して誠実なものとは言えないものでした。「日韓パートナーシップを構築する」と約束しながら、アメリカに対しては心を使っても、アジアに対しては無神経といわざるを得ません。小泉首相が靖国神社参拝を公言してはばからないのもその一つです。
これに対し、3月27日、日本カトリック正義と平和協議会は担当司教の名で、関係大臣当てに「教科書検定に関する要請書」を送り、4月3日、問題の教科書が検定を通過するや、5月7日に日本の司教様がたはそれが検定を合格したことに深い憂慮と遺憾の意を表明しました。(「カトリック新聞」5月13日号参照) さらに、小泉首相の靖国神社公式参拝に関しても日本カトリック正義と平和協議会は担当司教の名で、反対表明をしまし(「カトリック新聞」7月8日号:((2)を参照)
このような日本の司教様がたの行動に「心から賛同」する趣旨の手紙が韓国司教協議会の正義と平和委員会会長のチェ・ヨンスウ司教から届けられたことが「カトリック新聞」の7月1日号で報じられています。((3)参照)。実は日韓の司教様方の交流は、日韓の歴史の正しい認識を分かち合おうとして8年程前から始まっており、毎年交互に相手の国を訪問し理解と親睦を深めてこられました。昨年の平和旬間の際には、広島教区とプサン教区とフィリピンのインファンタ教区は互いに姉妹関係を結びました。
ちなみに、去年の日韓司教交流会はプサンで開かれ、私もこれに少し参加させていただきましたが、このときの勉強会には、『日韓文化交流会議』の韓国側の座長である 池明観 翰林大学教授と、日本側の委員の一人田中優子 法政大学教授が招かれて、勉強会が行われていました。
このときは日本から10人の司教様が参加され、韓国からは12人の司教様が参加されていました。小泉首相への抗議の書簡に署名をされた12名の司教様方は、ほとんどこの勉強会によく出てこられた方々です。司教様方は全部が歴史の専門家ではないにしろ、この問題に関しては、誠実に勉強してこられた方々と思います。
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